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RabbitHome作品 小説&ネタ公開・推敲ブログ(ネタバレ有)
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「あなたはどうして逆さまに歩けるの?」
「逆さま?上も下も右も左もないよ。ここは夢の中なんだからなんでもありなのさ」
「なんでも?」
「そう。逆に言えば確かなことなど一つもないってこと。ここはドコだかわからない。僕は誰だかわからない」
「あら、確かなことならあるわ」
「へぇ?どんなこと」
「”私”が”ここ”に居るということ」
「え?」
「私が誰かということも、ここが何処かということも関係ないわ。でも、私はここに居るの」
「君は本当に君なの?」
「私は誰になっても私なのよ」
「・・・ぷっ、ははっ!君って随分かわってる!」
「そうなのかしら?」
「そうだよ。大抵、誰でも、ここがどこか自分が誰か考えるものさ。わからないと不安にならない?」
「でも、今の私は私が私であることを知っているもの。 そうね、今、私に何もできることがなかったら私は不安になると思うわ」
「できること?」
「そうよ。私は今、貴方と会話できるし、こうしてほら、歩くこともできるし。これから何をしようかと考えられる。そうやって、何かをやろうと思っている間は不安にならないわ」
「これから・・・か」
「あなたはどうするの?」
「僕?」
「そう。これからあなたはどうするの?」
「・・・・・・君は僕も信じるの?」
「どういう意味?」
「僕がここにいること」
「信じるわ。だってあなたは ここに居るもの」
「そう?居るように見えて、居ないのかも」
「そうね・・・あなたは私じゃないから。 ねぇ、それなら手を繋いで。それで分かるわ」
「・・・手?」
「あなたにもついてるでしょ?ね、手を繋ぎましょ」
「・・・・・・うん」

「ほら、あなたも確かにここに居るわ。私は貴方に触れているもの。あなたも、私がここに居るって確かめられた?」
「・・・あぁ」
「ふふ、あなたの手、温かいわ」
「うん、君の手も」

「私はセレネよ。えぇと、今は、ね」
「くす・・・僕はクレスだよ」
「クレス?」
「うん」
「私ね、あなたと一緒で嬉しいわ」
「え?」
「思ったのだけれど、やっぱり私にできることがあっても、ここに一人だったら不安だったと思うの。でもあなたが居てくれたから不安にならなかったんだわ」
「・・・・・・セレネ」
「何?」
「僕も・・・僕も君と一緒で嬉しいよ」
「えぇ、有難う」


そして少年は目が覚めた。
手のひらに残る少女の温もり。
見つめながら彼は呟く。


「君はここに居た・・・?」



――――― セレネ ―――――



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