RabbitHome作品 小説&ネタ公開・推敲ブログ(ネタバレ有)
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※ 初期設定
※ 現行との違い ⇒ クレスの父母は既に他界している。クレスは後妻の子
「学者になるだと?」
「えぇ」
「ならん。例えこの家を継ぐのがお前の兄だとしても、お前にはその補佐という重要な役目がある」
「勿論、お前にはしかるべき相手をきちんと選んで結婚させる」
「僕にはもう、心に決めた女性が居ます」
「それはどこの誰だ」
「わかりません」
「お前は私を馬鹿にしているのか」
「いいえ」
「だけど僕は、その女性に会うために探しに行きます」
「巫山戯るな。そんな我侭が許されると思うのか。立場というものを考えろ」
ランプの灯り ひとつだけに照らし出される薄暗い室内に、低い男の声が響いた。 葉巻の煙と一緒に吐き出されたその声は、怒りに満ちていて、静かだが他を圧倒させる力を帯びている。 その声音と同じだけ、他を圧倒させる力を持つ瞳が、目の前の少年を見据えていた。
しかし少年はその言葉にも視線にも臆することなく、目の前のその男に・・・自らの父親に、睨み返すような強い視線を返した。 普段は晴れた青空を映したかのような色の瞳も、今は小さなランプの炎をうけて夕焼けのように燃えていた。
「これは僕の意志です。家を継ぐのは兄さんが居ます」
ゆっくりと、強い口調で少年はきっぱりと言う。 少年から青年へと成長段階にある彼の声音は、男らしい低い響きの中にまだ微かな子供らしさを残しているが、それでも彼の父親の覇気に劣りはしなかった。
「お前は・・・態々 私に勘当されたいと言うのか」
なんど繰り返した問答か。 少年は身動ぎもせずに父親を見つめていたが、内心では溜息を吐いていた。
結局 今彼らが論じているのは、お互いの信念が全く違うものであるからなのだ。 どちらかが、それを折らなければ和解はなく、それはどちらかが心を捨てるということだ。
そんなことができるわけがない。
お互いに譲ることができないのだから、きっと分かり合うということは不可能なのだ。
「・・・そうしなければ、相容れないというのであれば」
言葉なく、二つの視線がお互いを見つめた。
疲労か、悲しみか。
「去れ」
「兄さん・・・・この家を宜しくお願いします」
「ふん、恥さらしが。お前などに言われなくとも」
「あぁ、クレス!クレス!待って、お願い考え直して頂戴。家を出るなんてそんなこと。それに勘当だなんて」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません、お母様。今日まで僕をここまで育てて下さったお父様とお母様には本当に感謝しています。けれど・・・このまま あの家で一生を終わらせる気はないのです。今まで僕はそれ以外の人生を知らなかったけれど・・・僕はもう、自分の道を見つけたんです」
「だからって・・・外のことを何も知らない貴方が、家を出てどう暮らすというのです」
「大丈夫。いろいろ教えてくれる友人がいるのです」
「友人?貴方に?そんな筈はないわ! 何より、身体の弱い貴方が・・・もし、何かあったら・・・!」
「・・・・・・お母様。僕の気持ちは変わりません。今まで有難うございました」
そういうと、少年は振り返ることなく、自分の家を後にした。
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※ 現行との違い ⇒ クレスの父母は既に他界している。クレスは後妻の子
「学者になるだと?」
「えぇ」
「ならん。例えこの家を継ぐのがお前の兄だとしても、お前にはその補佐という重要な役目がある」
「勿論、お前にはしかるべき相手をきちんと選んで結婚させる」
「僕にはもう、心に決めた女性が居ます」
「それはどこの誰だ」
「わかりません」
「お前は私を馬鹿にしているのか」
「いいえ」
「だけど僕は、その女性に会うために探しに行きます」
「巫山戯るな。そんな我侭が許されると思うのか。立場というものを考えろ」
ランプの灯り ひとつだけに照らし出される薄暗い室内に、低い男の声が響いた。 葉巻の煙と一緒に吐き出されたその声は、怒りに満ちていて、静かだが他を圧倒させる力を帯びている。 その声音と同じだけ、他を圧倒させる力を持つ瞳が、目の前の少年を見据えていた。
しかし少年はその言葉にも視線にも臆することなく、目の前のその男に・・・自らの父親に、睨み返すような強い視線を返した。 普段は晴れた青空を映したかのような色の瞳も、今は小さなランプの炎をうけて夕焼けのように燃えていた。
「これは僕の意志です。家を継ぐのは兄さんが居ます」
ゆっくりと、強い口調で少年はきっぱりと言う。 少年から青年へと成長段階にある彼の声音は、男らしい低い響きの中にまだ微かな子供らしさを残しているが、それでも彼の父親の覇気に劣りはしなかった。
「お前は・・・態々 私に勘当されたいと言うのか」
なんど繰り返した問答か。 少年は身動ぎもせずに父親を見つめていたが、内心では溜息を吐いていた。
結局 今彼らが論じているのは、お互いの信念が全く違うものであるからなのだ。 どちらかが、それを折らなければ和解はなく、それはどちらかが心を捨てるということだ。
そんなことができるわけがない。
お互いに譲ることができないのだから、きっと分かり合うということは不可能なのだ。
「・・・そうしなければ、相容れないというのであれば」
言葉なく、二つの視線がお互いを見つめた。
疲労か、悲しみか。
「去れ」
「兄さん・・・・この家を宜しくお願いします」
「ふん、恥さらしが。お前などに言われなくとも」
「あぁ、クレス!クレス!待って、お願い考え直して頂戴。家を出るなんてそんなこと。それに勘当だなんて」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません、お母様。今日まで僕をここまで育てて下さったお父様とお母様には本当に感謝しています。けれど・・・このまま あの家で一生を終わらせる気はないのです。今まで僕はそれ以外の人生を知らなかったけれど・・・僕はもう、自分の道を見つけたんです」
「だからって・・・外のことを何も知らない貴方が、家を出てどう暮らすというのです」
「大丈夫。いろいろ教えてくれる友人がいるのです」
「友人?貴方に?そんな筈はないわ! 何より、身体の弱い貴方が・・・もし、何かあったら・・・!」
「・・・・・・お母様。僕の気持ちは変わりません。今まで有難うございました」
そういうと、少年は振り返ることなく、自分の家を後にした。
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