RabbitHome作品 小説&ネタ公開・推敲ブログ(ネタバレ有)
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私達は歩きながら名前を紹介した。
それによると、金髪の男の子の方が ムーンフェイズ・ワックス で通称フェイズ。
黒髪の美形の方がアレキサンド・ライト で通称がアレックス らしい。
勿論、この古城の主はアレックスの方だ。
「灯りのついている道を歩けば、迷う心配はないはずだ」
説明しながら、アレックスが城の中を先導する。
城は大きくて廊下も沢山あるけれど、燭台の蝋燭に炎が燈っているのは一部の廊下だけのようだった。
「僕等より炎の方が信用できるよ」
一番後ろを歩いていたフェイズが軽くそう付け足す。
それって彼らも道を覚えていないってこと・・・?冗談だとは思うけど。
私はこのとき、外からこの城を見たときに感じた違和感の正体に思い当たった。とても優美なのに、城塞のようにも見えたあのイメージ。
そうだ、この城の窓はとても小さいんだ。
南側の廊下ですら、人一人がやっと通れる程度の窓しかない。しかもそれですら、感覚が空いていて数は少ない。今はもう夜だから、どちらにしろ暗いけれど。これでは朝になったって薄暗さにはあまり変化がないような感じだ。
そのかわりなのか、壁にはずらりと燭台が並んで、ゆらゆらと揺れる炎が廊下を照らし出している。
そして廊下には、動物を象った石像が間をあけていくつか並んでいた。
鷹に、梟・・・と翼を広げた雄々しい姿の猛禽類の石像が続く。
・・・かと思えば・・・い、イルカ??
先ほどまでの石像に比べて、とても愛らしい顔を水しぶきの間から覗かせている。
次は熊。うーん、この石像って一体どういう基準で並んでるんだろう。
足音は、廊下でも分厚い絨毯に吸収されて全く聞こえない。
誰も喋らないときに聞こえるのは、フェイズの手錠についた鎖が発する、じゃらじゃらとした音だけだった。
「このお城に住んでいるのって、お二人だけなんですか?」
リースが丁寧に尋ねると、アレックスが笑った。
「まさか。俺たちだけじゃこんなに広い城を掃除できるわけがない」
大げさに手を広げて指し示された周囲は、やっぱり塵一つ見当らない。
玄関ホールもそうだったけれど。
このお城、どこもかしこもすごく丁寧に掃除されている。それこそランプの裏まで。
薄暗い廊下でも、気味が悪いとか、嫌な感じがあまりしないのは、この清潔感のおかげなんだろう。とても大きなお城だし、一人や二人で掃除しきれるとも思えないから、きっと沢山の使用人の人たちが居るはず。
私の思考に答えるようにフェイズがのんびりと言った。
「たくさん、いるよね。僕らのほかにも」
「俺たち以外の皆は恥ずかしがりやだからな。そうそう人前には姿を見せないのさ」
アレックスの言葉に、何故かフェイズがクスクスと笑っている。
一つの燭代の影がゆらりと大きく揺れた。
そんな話を交わしている間に、目的地についたようだ。
アレックスが、ある部屋の扉の前で立ち止まった。
玄関から2階分階段を昇り、南側の廊下を真っ直ぐに行った突き当たり。
きっと、城の最南東にある塔だろう。
迷うような道筋でもないし、これだったら私達だけでも十分玄関ホールまで帰れる。
「部屋にあるものは好きに使っていい。ここなら、入り用な物は大体揃っているはずだ。何か足りなかったら、そこら辺に居る奴を適当に捕まえて聞いてくれ。・・・まぁ、まだ姿を見せないかもしれないが・・・」
最後の言葉を言いながら、アレックスは微苦笑した。
沢山いる筈の使用人の皆が皆、そんなに恥ずかしがりやだって言うのだろうか。
「その場合は、ここからじゃちょっと遠いが北西の塔までくるといい。俺たちはそこに居る」
彼が扉を開いて、私達を中に招き入れた。
広い部屋にベットと鏡台、そしてクローゼットが二つずつ。
この部屋の窓は、今まで見たものの中では一番大きかった。
部屋の暖炉では、既に赤々と炎が燃えている。
納屋でもいいからと思っていた私達にとって、この部屋は豪華すぎた。
「こ、こんな・・・」
思わず動揺してよろけたところを、後ろからふわりとアレックスに支えられる。
「大丈夫、歓迎するって言っただろ」
後ろから囁かれて、今度は別の意味で動揺してしまう。
私の動揺は伝わっていたと思う。軽く肩を叩かれて、身体が離れた。
なんだか、くすりと笑われたような気もする。
揶揄われたんだろうか。
「一時間半ぐらいで晩餐の準備もできるだろう。その頃また迎えに来る」
言い置いて、彼らは部屋を出て行った。
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それによると、金髪の男の子の方が ムーンフェイズ・ワックス で通称フェイズ。
黒髪の美形の方がアレキサンド・ライト で通称がアレックス らしい。
勿論、この古城の主はアレックスの方だ。
「灯りのついている道を歩けば、迷う心配はないはずだ」
説明しながら、アレックスが城の中を先導する。
城は大きくて廊下も沢山あるけれど、燭台の蝋燭に炎が燈っているのは一部の廊下だけのようだった。
「僕等より炎の方が信用できるよ」
一番後ろを歩いていたフェイズが軽くそう付け足す。
それって彼らも道を覚えていないってこと・・・?冗談だとは思うけど。
私はこのとき、外からこの城を見たときに感じた違和感の正体に思い当たった。とても優美なのに、城塞のようにも見えたあのイメージ。
そうだ、この城の窓はとても小さいんだ。
南側の廊下ですら、人一人がやっと通れる程度の窓しかない。しかもそれですら、感覚が空いていて数は少ない。今はもう夜だから、どちらにしろ暗いけれど。これでは朝になったって薄暗さにはあまり変化がないような感じだ。
そのかわりなのか、壁にはずらりと燭台が並んで、ゆらゆらと揺れる炎が廊下を照らし出している。
そして廊下には、動物を象った石像が間をあけていくつか並んでいた。
鷹に、梟・・・と翼を広げた雄々しい姿の猛禽類の石像が続く。
・・・かと思えば・・・い、イルカ??
先ほどまでの石像に比べて、とても愛らしい顔を水しぶきの間から覗かせている。
次は熊。うーん、この石像って一体どういう基準で並んでるんだろう。
足音は、廊下でも分厚い絨毯に吸収されて全く聞こえない。
誰も喋らないときに聞こえるのは、フェイズの手錠についた鎖が発する、じゃらじゃらとした音だけだった。
「このお城に住んでいるのって、お二人だけなんですか?」
リースが丁寧に尋ねると、アレックスが笑った。
「まさか。俺たちだけじゃこんなに広い城を掃除できるわけがない」
大げさに手を広げて指し示された周囲は、やっぱり塵一つ見当らない。
玄関ホールもそうだったけれど。
このお城、どこもかしこもすごく丁寧に掃除されている。それこそランプの裏まで。
薄暗い廊下でも、気味が悪いとか、嫌な感じがあまりしないのは、この清潔感のおかげなんだろう。とても大きなお城だし、一人や二人で掃除しきれるとも思えないから、きっと沢山の使用人の人たちが居るはず。
私の思考に答えるようにフェイズがのんびりと言った。
「たくさん、いるよね。僕らのほかにも」
「俺たち以外の皆は恥ずかしがりやだからな。そうそう人前には姿を見せないのさ」
アレックスの言葉に、何故かフェイズがクスクスと笑っている。
一つの燭代の影がゆらりと大きく揺れた。
そんな話を交わしている間に、目的地についたようだ。
アレックスが、ある部屋の扉の前で立ち止まった。
玄関から2階分階段を昇り、南側の廊下を真っ直ぐに行った突き当たり。
きっと、城の最南東にある塔だろう。
迷うような道筋でもないし、これだったら私達だけでも十分玄関ホールまで帰れる。
「部屋にあるものは好きに使っていい。ここなら、入り用な物は大体揃っているはずだ。何か足りなかったら、そこら辺に居る奴を適当に捕まえて聞いてくれ。・・・まぁ、まだ姿を見せないかもしれないが・・・」
最後の言葉を言いながら、アレックスは微苦笑した。
沢山いる筈の使用人の皆が皆、そんなに恥ずかしがりやだって言うのだろうか。
「その場合は、ここからじゃちょっと遠いが北西の塔までくるといい。俺たちはそこに居る」
彼が扉を開いて、私達を中に招き入れた。
広い部屋にベットと鏡台、そしてクローゼットが二つずつ。
この部屋の窓は、今まで見たものの中では一番大きかった。
部屋の暖炉では、既に赤々と炎が燃えている。
納屋でもいいからと思っていた私達にとって、この部屋は豪華すぎた。
「こ、こんな・・・」
思わず動揺してよろけたところを、後ろからふわりとアレックスに支えられる。
「大丈夫、歓迎するって言っただろ」
後ろから囁かれて、今度は別の意味で動揺してしまう。
私の動揺は伝わっていたと思う。軽く肩を叩かれて、身体が離れた。
なんだか、くすりと笑われたような気もする。
揶揄われたんだろうか。
「一時間半ぐらいで晩餐の準備もできるだろう。その頃また迎えに来る」
言い置いて、彼らは部屋を出て行った。
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